イールドカーブ(2)

日本のイールドカーブコントロール

イールドカーブの内容と、その形状についての説明をしましたので、日本のイールドカーブがどうなっているのかをご説明します。日銀は長年にわたり金融緩和を行なってきたため、イールドカーブはフラット化(超短金利縮小)していました。そのイールドカーブを正常な位置にすることを目的として、2016年「長短金利操作付き量的•質的緩和」を導入しました。長短金利操作付きという部分が、イールドカーブをコントロールするということです。そのコントロールは、単純に言えば短期金利はマイナスに、長期金利は0%程度で推移させています。このようにして長短金利をコントロールすることで、イールドカーブのフラット化による金融機関の経営•収益悪化の問題解決を図っています。

イールドカーブが注目されるわけ – レッドシグナルとしてのイールドカーブ

ニュースなどで見聞きする「イールドカーブ」は主に米国債のことです。そして、米国債の中でも注目されている債券利回りは、短期の2年債利回りと長期の10年債利回りです。
短期債の利回りは目先の金融政策の動向に大きく左右され、長期債の利回りはもっと先の経済や物価、金融政策を巡る市場の見方を映して動きます。
なぜ米国債のイールドカーブが重要視されるのかというと、それは過去に米国で起こった逆イールド(長短金利逆転)が、米国景気後退ひいては世界景気後退のサインだったとされているからです。
先程、米国では過去およそ40年間に6回逆イールドが発生したとお話しました。そのいずれも、逆イールドが発生してから約12〜18ヶ月後に景気後退局面に入っているのです。

1990年後半の日本のバブル崩壊とも重なる世界景気後退、2001年前半からのITバブル崩壊、そして2007年後半からのリーマンショック。
過去の大きな景気後退局面は逆イールドが発生してから約1年半後に起こっています。ただし、過去の米国の長短金利逆転は、直ちに景気後退や株安につながるわけではなく、景気後退局面入りまでの12ヶ月〜18ヶ月の間には、アメリカを代表する株価指数S&P500は、約24〜39%上昇しています。
株価はピークをつけたのち、景気後退局面に入り大きく下落しました。そして直近では2019年3月に逆イールドが発生しました。過去の経験則もあり、投資家や専門家の経済に対する警戒感が強まりました。

景気後退は、1年3ヶ月(15ヶ月)後の2020年6月前後に起こる可能性がありました。
その後、新型コロナウィルスによる経済への打撃が大きく、短期金利が急激に低下したため、間もなく2020年3月には、逆イールドは解消しました。
そして、2020年に米国経済は約10年半ぶりに景気後退入りし、日本においても、内閣府により景気後退局面に入ったと暫定的に認定されました。
(2020年2月末頃から3月にかけて世界的な株価大暴落が起こりました。これは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が世界的に流行し始めた時期です)

その後、株価については金融緩和やコロナショックからの回復期待などもあり現在も株高が続いています。
米金融当局の間では逆イールドは警戒されているものの、景気後退との因果関係については認めていません。
(今回は、新型コロナウイルス感染症COVID-19の流行という状況がイレギュラーで、かつ、巨額の財政出動があったゆえ今までとは、同一で論じるのは難しいかもしれません)
しかし、過去の経験則から逆イールドが景気にとって直接的な問題ではないにしろ、因果関係はあるとみられています。イールドカーブは今後も投資家にとって景気や経済を予測する上で有効な指標と言えます。

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